「ぼくがカンガルーに出会ったころ」

dreamingjewels2006-07-08

「ぼくがカンガルーに出会ったころ」
作者:浅倉久志
出版社:国書刊行会
発行:2006年6月

私は訳者あとがきが大好きです。特に引用とユーモアが上手い浅倉久志さんのあとがきは、図書館で本編も読まずそれだけ読んだりしてました。
邪道ですね。
さて今回読んだのは、日本SF界きっての翻訳家の一人、浅倉久志さんの初エッセイ集。

柱はディックとヴォネガットのあとがきです。ところが、私は邪道な読書を続けていたせいで、この部分はほとんど既読でした(本編の作品にあらず)。むしろ、巻頭「ぼくがカンガルーに出会ったころ」に始まる翻訳家になるまでのつれづれや、「ユーモアSFに魅せられて」が面白かったですね。また、「ポーリン・ケイルの愛情と激情」と題された一文に共感しました。浅倉さんも映画評論家・双葉十三郎ファンだったんですね。

そして、SFスキャナーのセレクション。SFスキャナーとは、雑誌「SFマガジン」に載っていた、海外SFの最新情報を紹介するコラムページ。伝説の「止まらなくなった宇宙船の話」が”やっぱり”収録されていて、うれしかった。これを読むと、ポール・アンダーソン「タウ・ゼロ」(創元SF文庫刊)がまた読みたくなります。

昔なら、晶文社あたりが出しそうな、暖かい雰囲気のエッセイ集でした。情報量も多いから、じゅうぶん元は取れた感じです。
こうなると、この後でるという、もう一人の練達SF翻訳家・伊藤典夫さんの評論集が楽しみになってきます。待ち遠しい。