「殺人ピエロの孤島同窓会」

「殺人ピエロの孤島同窓会」

作者:水田美意子

出版社:宝島社

発売:2006年3月

6月の課題図書2冊目。
第4回「このミステリーがすごい!」大賞特別奨励賞受賞作。

私の読んだなかで、現時点で今年一番”サイテー”な長編。無軌道な展開と頭の悪い登場人物で彩られた、この大量殺人小説は決して「最悪」や「最低」というフレーズではしっくりこない。そのため敢えて”サイテー”と呼びました。

100Pほど読み続け、「なんかこの”サイテー”加減は見覚えがある」。そういえばまるで戸梶圭太を読んでいるみたい!ラストの予定調和も含め、下調べを全くせずに戸梶圭太が長編を書いたらこんな感じではないでしょうか。

文章がひどい、という感想も耳にしましたが、そこまでひどくもないでしょう。とりあえず読みやすい。この手の大賞に応募される方は目を通してもいいでしょう。だって12歳の中学1年生(執筆時)が書いたんですから。このレベルの読みやすさがないと最終候補なんて絶対無理ってことですからね。

ミステリとしてはてんでなってないし、人に勧める気もありません。ですが、才能がない人かといわれると、絶対そんなことはない。いつか本当に面白い作品を書きそう。宝島社というイケイケドンドンな出版社の社風を考えれば、「12歳の長編ミステリ」に話題性は十分あります。でもそんなもの抜きでも、いつかは世に出てくる才能でしょう。少なくとも、普通の作家をひとりやふたり世の中に増やすよりは、こんな無茶苦茶な作家が出てきたほうが私は楽しい。

ちなみに私のお気に入りは35章です。池上永一が乗り移ったのかと思いました。