「石の血脈」

dreamingjewels2006-06-14

石の血脈
作者:半村良
出版社:角川春樹事務所(ハルキ文庫)
発表:1971年11月
発売:1999年9月

課題図書の「殺人ピエロの孤島同窓会」が読書心を萎えさせる作品だったので、口直しに読みました。恥ずかしながら初読です。

巨石信仰や人狼伝説など古今の伝承に材を取り、人類を裏で牛耳るもうひとつの世界を現出させるのですが、これが微塵も胡散臭くない。特に前半、幾多の謎が錯綜する中で、あくまでも語り口は地に足のついた企業小説。実にバランス感覚が良く、オカルトなんて言葉が薄っぺらく感じます。そういう意味で、当時『伝奇ロマン』として本書を売り出した早川書房は良いセンスですね。

随所で見受けられる庶民感覚や現代批判も好感が持て、この1作で私は半村良のファンになってしまいました。早めに「産霊山秘録」も読もう。