「アマゾニア」

dreamingjewels2006-05-31

「アマゾニア」
作者:粕谷知世
出版社:中央公論新社
発表:2004年10月

駆け込み、5月の課題図書その2の感想を。

「クロニカ」で第13回日本ファンタジーノベル大賞を受賞した粕谷知世の第2作となる本作は、16世紀のアマゾンが舞台です。女だけの部族「泉の部族」を縦糸に、侵略途上でその「泉の部族」へ置き去りにされたスペイン人の男2人を横糸にして、物語が展開されます。

読みどころは、後半に勢いを増す幻想描写もさることながら、ファーストコンタクトSFを想起させる異文化の衝突にあるでしょう。森の民の生活は、ル=グィンさながらで堂に入ったもの。考え抜かれてます。

伏線で読者を引っ張りまわす技量はまだこれからなのかな、とも感じましたが、それでもデビュー2作目とは思えない面白さ。登場人物の多い上下段組426pの大作なのに、文章もこなれていて人物の描き分けも確実とあって、難なく読めました。「クロニカ」と一緒に文庫化してほしいですね。

ちなみに、第4回センスオブジェンダー賞受賞作です。