「ドクター・ブラッドマネー」

dreamingjewels2006-05-16

「ドクター・ブラッドマネー」DR.BLOODMONEY 

作者:フィリップ・K・ディック

出版社:東京創元社(創元SF文庫)

発売:2005年1月

5月の課題図書2冊のうち1冊目を読了いたしました。
「核戦争後のアメリカ西海岸」を舞台にした、1965年発表のSF小説。
ろくな食べ物がないためキノコの見分け方が重要な能力だったり、タバコが手巻きの貴重品だったりと、文明が退行した生活描写を基調に、超能力を持った身体障害者の青年がのし上がってゆく―というのがあらすじです。でも読みどころは、開巻から300ページあたりまで続く、わりあいのんびりした「普通の小説」部分でしょう。この本、まるでそういうポスト・ホロコーストの世界で読まれている一般小説みたいなんですよね。正直いってディックの長編を読むのは15年ぶりでしたが、非常にまっとうな読書をした気持ちです。久しぶりに他のディック長編を紐解きたいな、と思わせてくれました。ちなみに、今回は巻末まで破綻せず、世界がバラバラ崩れたりもしません。まだこの本を読んでないディックファンは、その点を期待しないように。