「吉原御免状」

吉原御免状」☆☆☆★★★
作者:隆慶一郎
出版社:新潮社(新潮文庫
発表:1986年
発行:1989年9月

【途中までのあらすじ】
明暦三年(1657)年、宮本武蔵に育てられた青年・松永誠一郎は、武蔵の「二十六歳になったら江戸に行き、吉原に庄司甚右衛門を訪ねよ」という遺言に従い、吉原の地に足を踏み入れる。だが、会うべき庄司甚右衛門はこの世になく、柳生の忍が”神君御免状”奪還のため誠一郎を襲う。武蔵の意図は、そして神君御免状とは何か。

【感想】
みんなが読んでる基本図書を、私は結構読み逃しています。というわけで今回は、世評の高い「吉原御免状」を読みました。
一日で読み終わりました。
いやー、面白い。
時代小説の立ち回りや色っぽい場面はそつなくこなしてる、という印象。それよりも見所は歴史の推論的なところでしょう。吉原の成り立ちからここまで話を大きくするなんて、と感心しきり。読んでる間、ジャンルこそ違うけれど、川端裕人の「竜とわれらの時代」を思い起こしていました。だって、話の筋よりも、歴史の推論に推論を組み上げて予想外の景色を生み出してゆく手際のほうが面白いんだもの。
超能力や時間旅行も顔を出すし、まるでかつてのファンタジーノベル大賞に感じたジャンルを越境する力をもった作品でもあります。
この一作で完結していない点や、作品単独でのバランスが必ずしも良くない点があるので、私としてはそんなに高評価を付けられないのですが、娯楽小説が好きなひとは間違いなく楽しく読める作品だと思います。