「逢びき」

dreamingjewels2006-05-10

イギリス映画「逢びき」を500円のDVDで観ました。

「逢びき」Brief Encounter
監督:デヴィッド・リーン
脚本:デヴィッド・リーン、ノエル・ カワード
出演:シリア・ジョンソン、トレヴァー・ハワード、スタンリー・ハロウェイ
公開:1945年・イギリス

◎この不倫ものの定番、「逢びき」は音楽でも有名です。それは、ラフマニノフのピアノ協奏曲第二番。世間では、甘ったるい・感傷的と言われがちですが、私の偏愛する曲です。そして、この映画、確かにこの曲を上手く使っていました。

  • 耳のいい監督

監督はデヴィッド・リーン。「戦場にかける橋」「ドクトル・ジバゴ」そして何といっても「アラビアのロレンス」。面白い映画を撮る監督でもあるし、何より、耳がいい監督。どれか一本でもご覧になった方はお分かりでしょうが、映画音楽としても上手な作品ばかりです。(クワイ川マーチ、と聞いて口笛を吹いてしまう人は少なくないはず。)「逢びき」でもピアノ協奏曲第二番のいいとこ取りをしてまして、これが実に良く場面にはまる。これは、”既婚ながら恋に落ちる主婦の独白”という珍しいスタイルが音楽とよくあっているからでしょう。

  • 完成度の高い脚本

終わった恋の回想として語られる1時間半たらずの映画ですが、最終的にオープニングへ戻ってくる脚本が見事。”おしゃべり好きの知り合いに、たまたま列車の待合喫茶で会った”という開巻の状況がこんなに強烈なパンチになってリピートされるとは、ちょっと予想してませんでした。もとはノエル・カワードの舞台劇、それも場面転換のない作品。ですが、列車内やプラットホームまでの地下道など、映画で追加されたであろう場面はどれも臨場感にあふれたもので、作品に奥行きを与えています。話を転がすきっかけも上手で、普通の主婦が恋に落ちる過程は実に周到。どう周到かは何も書きませんが、「これなら恋愛に発展してもおかしくないよなあ」と思わずうなずいてしまいます。

  • テクニックを見せつけられたい方、どうぞ

大きな事件や派手な恋愛沙汰、派手な濡れ場なんて爪の先ほどもない映画です。だからこそ、話芸と演出で観せ切ってしまう凄さがそこにはあります。日本での知名度はすっかりなくなった「逢びき」、私にとっては古典と呼ぶに相応しい良作でした。

◎それにしても、リーン監督ってミステリ好きなんじゃないかなあ。